LDLコレステロールとは?働きや体への影響と値を下げる方法を紹介

健康診断で多くの人が気になるのが、コレステロールの数値でしょう。全体的に数値が高いと良くないことはわかっていても、LDL・HDLという2つのコレステロール値の違いがよくわからない、という人もいるかもしれません。

この記事ではLDLコレステロールに注目し、LDLコレステロールが体内でどのように働き、健康にどのような影響があるかを解説します。また、HDLコレステロールとの違いや、LDLコレステロールの数値を下げる方法もご紹介します。

まず、コレステロールとはどのような物質なのかを解説します。また、LDLとHDLの違いや、それぞれの役割についてもチェックしましょう。

◇コレステロールについて
コレステロールとは、人間の体内にある脂肪分を指します。脂肪分というと悪者と思われがちですが、実際のところ、コレステロールは細胞膜や性ホルモン、副腎皮質ホルモン、胆汁酸などを作る材料として、重要な物質です。

胆汁酸の材料であるコレステロールが減ると、ビタミンAやビタミンDなどの脂溶性ビタミンの代謝にも関わるため、人体には欠かせません。

体内のコレステロールは、8割程度が脂質や糖質をもとにして肝臓で合成され、残りの2割程度は、外から摂取した食べ物から取り込むとされています。

◇コレステロールは「LDL」と「HDL」に分けられる
コレステロールは脂質なので、そのままでは血液中に溶けません。そのため、体内ではタンパク質と結合し、LDLコレステロール、HDLコレステロールという2種類のリポタンパク質として運ばれます。

リポタンパク質とは、アポリポタンパク質と脂質が結合した球状の複合体粒子で、脂質が血漿中で存在し移動するために必要な様態のことです。LDLとHDLは、粒子の大きさや比重が異なることで、区別されています。

LDLコレステロールは、肝臓で生成したコレステロールを全身に供給する働きがあり、別名「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

一方、HDLコレステロールは体内で増えすぎたコレステロールを回収し、血管壁のコレステロールを除去して肝臓に戻す働きがあります。そのため「善玉コレステロール」とも呼ばれているのです。

「悪玉コレステロール」と呼ばれているLDLコレステロールは、なぜ増えすぎると体に悪影響をおよぼすといわれるのでしょうか。

近年重要視されている、LDL・HDLの比率を表す「LH比」と合わせて解説します。

◇LDLコレステロールが増える影響
「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールも人体にとっては不可欠なもので、血液中の量が正常であれば安定した状態を保ちます。

しかし、何らかの理由でLDLコレステロールが増えると、さまざまな病気の原因になります。これが「悪玉」と呼ばれる理由です。

具体的には、増加したLDLコレステロールが動脈の内壁に付着し血管が硬くなることで、血管の弾力性が失われ、血液の循環が滞ります。狭くなった血管内で、血管壁に付着した塊が破裂し血栓になると、心臓に負担がかかったり、冠動脈が完全に詰まって生死に関わる状態になったりします。

血栓の流れによっては、脳内の血管を詰まらせて血流が止まり、脳の神経細胞に影響が出てしまう場合もあります。

一方、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールは、蓄積したLDLコレステロールを除去・回収して血管内壁が硬くなるのを防ぎ、血管の弾力性を保ちます。さらに、血液を固まりにくくする作用や、抗酸化作用を持つとも考えられています。

◇LDL・HDLのバランスを示すLH比とは?
かつては、コレステロール値の高い状態が続くと、病気の原因になるとされてきました。しかし、現在では「HDLコレステロールはむしろ高いほうが良い」という見方に変わっています。

例えば、LDLコレステロールの数値に異常がなくても、HDLコレステロールの数値が正常値より低い場合は、血管にコレステロールがたまりやすく、血栓ができて詰まりやすくなることがわかってきました。

そのため、体内のコレステロールの状態を見る際は、LDL・HDL単独の数値に加え、最近ではLDL・HDLのバランスを見る「LH比」が重視されるようになっているのです。

具体的に説明すると、一般的に治療が必要なコレステロール値の診断基準は、以下の数値となっています。

・LDLコレステロール値:140mg/dl以上
・HDLコレステロール値:40mg/dl未満

一方で、「LDL値÷HDL値」で算出する「LH比」は次のような診断基準となっています。

LH比 血管の状態
1.5以下 健康な状態
1.6~2.4以上 コレステロールの蓄積が疑われる状態
2.5以上 血栓ができているおそれがあり、心臓への影響も懸念される状態


例えば、LDLコレステロール値が130mg/dl、HDLコレステロール値が50mg/dlの場合、それぞれの数値は基準値を十分クリアしています。

しかし、LH比を計算すると「130÷50=2.6」となり、かなり血管の状態が悪くなっていると予測されるでしょう。このようにLH比では、独立した数値だけではわからない健康状態を把握することが可能です。

血管の健康を保つためには、LDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを増やして、LH比を良好な数値に保つことが求められます。

LH比を良好に保つためには、まずLDLコレステロール値を下げるのがよいでしょう。
ここからは、LDLを下げるための、食生活や生活習慣などをご紹介します。

◇LDLコレステロールを増やす食べ物を控える
体内のコレステロールは、約2割が摂取した食品に由来しているとされます。まずはLDLコレステロール値を上げる食品を知っておきましょう。

脂肪を構成する脂肪酸のうち、動物性脂肪に含まれる「飽和脂肪酸」は、食べすぎるとLDLコレステロールが増加するとわかっています。特に、肉の脂身に多く含まれているため、脂身部分を取り除いたり、脂肪が少ない部位を選んだりして食べるとよいでしょう。肉の種類としては、牛肉や豚肉ならヒレ肉、鶏肉はムネ肉やササミがおすすめです。

飽和脂肪酸は肉以外にも、生クリームなどの乳製品、カップラーメンやスナック菓子といった加工品などに多く含まれますので、食べすぎには注意が必要です。また、マーガリンやショートニング、加工食品に多く含まれる「トランス脂肪酸」も、LDLコレステロール値を悪化させるとされています。

すでにLDLコレステロール値が高い人は、まず飽和脂肪酸のとりすぎを控え、さらに食事から摂取するコレステロールを1日200mg未満にすることが大切です。

◇不飽和脂肪酸をとる
脂肪酸のうち、魚や植物の油に含まれる「不飽和脂肪酸」には、LDLコレステロールを減らす働きがあります。

不飽和脂肪酸には、「多価不飽和脂肪酸」と「一価不飽和脂肪酸」の2種類があり、特にコレステロール値の改善を期待できるのが多価不飽和脂肪酸です。

多価不飽和脂肪酸の代表例としては、新鮮な魚に多く含まれるEPAやDHAなどが挙げられます。特に、イワシやサンマなどといった青魚に豊富に含まれていますので、これらを生食にすると効果的に摂取できるでしょう。

一価不飽和脂肪酸の代表例はオレイン酸です。オレイン酸はLDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを減らさないことが知られています。オレイン酸はオリーブオイルに多く含まれますので、コレステロールが気になる人におすすめです。ただし、とりすぎには注意しましょう。

アーモンドなどのナッツ類も不飽和脂肪酸の多い食品です。糖質が少なく食物繊維が豊富にとれますので、おすすめです。

◇水溶性食物繊維を多くとる
食物繊維は体内で消化されない物質で、水溶性と不溶性の2種類があります。

このうち、水溶性食物繊維はLDLコレステロールを包み込んで体外に排出するため、LDLコレステロールを下げる効果が特に期待できるでしょう。

水溶性食物繊維は、野菜や海藻、キノコ、果物などに多く含まれます。特に、水溶性食物繊維の一種であるペクチンを多く含む、ミカンなどがおすすめです。

◇定期的に運動する
定期的な運動は、LDLコレステロールを低下させることが確認されていますが、HDLコレステロールを増加させる効果も期待できます。つまり、LH比を大きく改善する可能性があるといえます。

ウォーキングなどの有酸素運動が、始めやすく安全でおすすめです。1回20~30分程度、週に数回程度行なうのがよいでしょう。

もちろん、運動だけでなく食生活の改善と合わせて取り組んでください。

◇生活習慣の改善
食生活と運動以外には、喫煙にも注意しましょう。喫煙はHDLコレステロールの数値を下げるとされるため、なるべく禁煙するのが改善の近道です。

また、ストレスはLDLコレステロールを増やす原因となります。仕事や人間関係などでストレスがある場合は、睡眠をしっかりとり、気分転換するなどして解消方法を考えましょう。

日々の生活で、より効果的にコレステロールを管理したい場合は、サプリメントを取り入れるのもおすすめです。

ポリコサノールという成分には、LDLコレステロールを低下させ、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスを改善し、総コレステロールを低下させる効果があるとされています。

血管の健康を守るためには、悪玉と呼ばれるLDLコレステロール単体の数値だけでなく、HDLコレステロールとの比率が重要です。まずはLDLコレステロール値を下げるよう、食生活や生活習慣の見直し、サプリメントの活用など取り入れてみましょう。

齋藤先生_背景透過_切り抜き

監修:ナグモクリニック東京院 女性更年期外来担当医師
斎藤 糧三 医師

1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。
2013年よりナグモクリニック東京院で栄養外来と女性更年期外来を担当している。
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