ポリコサノールとは?成分の概要や悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎると良くない理由について

健康診断で高コレステロール値を指摘され、食事など生活習慣の改善に取り組んでいる方も多いでしょう。しかし、体内の全コレステロールのうち、食事に由来するものはわずか2割程度にすぎません。残りの約8割は、おもに肝臓で合成されています。

肝臓におけるコレステロール生成の抑制に役立つとして注目されている成分が、「ポリコサノール」です。

この記事では、ポリコサノールの機能や安全性のほか、悪玉(LDL)コレステロールの増加を放置してはいけない理由を解説します。コレステロール値が下がらず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
まずは、ポリコサノールの概要を見ていきましょう。機能性と安全性が実証されているキューバ産サトウキビ由来のポリコサノールと、それ以外のポリコサノールの違いも解説します。

◇ポリコサノールについて
ポリコサノールとは、米ぬかやサトウキビ、小麦などのワックス成分から得られる炭素数20以上のアルコール組成物です。植物などから精製されるポリコサノールは単一成分ではなく、以下のような複数の成分を含んでいます。

キューバ産サトウキビ由来ポリコサノールの成分(成分名:化学式)
テトラコサノール(1‐tetracosanol):C24H49OH
ヘキサコサノール(1‐hexacosanol):C26H53OH
へプタコサノール(1‐heptacosanol):C27H55OH
オクタコサノール(1‐octacosanol):C28H57OH
ノナコサノール(1‐nonacosanol):C29H59OH
トリアコンタノール(1‐triacontanol):C30H61OH
ドトリアコンタノール(1‐dotriacontanol):C30H65OH
テトラトリアコンタノール(1‐tetratriacontanol):C32H69OH


ポリコサノールの血清脂質や肝機能に対する作用は数多く報告されており、特に炭素数28のオクタコサノールなどは、機能性素材として知られています。また、ヒトを対象とした試験論文は数多くあり、フランスやイタリア、中南米など世界30か国以上で使用されている機能性関与成分です。
日本でも、2019年にキューバ産サトウキビ由来のポリコサノールサプリメントが、機能性表示食品として消費者庁に届け出ています。

◇ポリコサノールの開発の歴史
ポリコサノールの開発の歴史は、1980年代までさかのぼります。キューバ国立科学研究所で行なわれたマウスなどを対象とする研究で、サトウキビワックスアルコールにコレステロール調節作用があることが示唆されたのです。

この結果を受け、ポリコサノールと呼ばれる高分子量アルコール(上述の8種)の特有の混合物に関する品質や安全性、効能に関する研究が進められ、1991年にはキューバ政府が販売権を獲得。そして1992年には科学研究報告書で初めて「ポリコサノール」という名称が使用されました。

◇キューバ産と一般的なポリコサノールの違いについて
ポリコサノールは天然由来成分であるがゆえに、原材料や産地によって成分組成が微妙に異なると考えられます。また、サトウキビワックス以外の原材料を用いた場合、製造方法によっては違う物質になってしまう可能性が否定できません。

実際、キューバ産サトウキビ由来ポリコサノールは、原材料のサトウキビワックスを基礎加水分解後に抽出した混合物なので、厳密にいうと他のポリコサノールとは異なります。

さらに、安全性・機能性についても、キューバ産サトウキビ由来のポリコサノールと一般的なポリコサノールは、別に考えなければなりません。現在、科学的根拠に基づき安全性・機能性が実証されているのは、キューバ産サトウキビ由来のポリコサノールだけです。キューバ産ポリコサノールは成分構成比が厳しく定められているため、安定したクオリティが期待できる点でも、他とは異なります。

思わぬ健康被害を避けるためにも、ポリコサノール製品を選ぶ際には原材料・原産地までチェックすることが必要です。

◇キューバ産サトウキビ由来ポリコサノールの安全性
キューバ産ポリコサノールの安全性は、数々の研究で実証済みです。

ポリコサノールの作用が1992年に初めて報告されて以降、キューバ産ポリコサノールに関する研究論文はヒトを対象としたものだけでも100編以上発表されています。

これらの論文において、キューバ産ポリコサノールはコレステロール値の改善に有意な結果が確認されているうえ、問題となる作用はほとんど報告されていません。
sub1_ポリコサノールにはどのような効果があるのか
それでは、ポリコサノールにはどのような効果があるのでしょうか。ここでは、キューバ産ポリコサノールで科学的に実証されている作用について、詳しく見ていきます。

◇総コレステロール値を低下させる作用
ポリコサノールには、肝臓におけるコレステロール生成量を減少させる作用があることがわかっています。健康な男女を対象とした試験では、8週間キューバ産ポリコサノールを摂取することで、総コレステロール値が12.4%低下しました。

◇悪玉(LDL)コレステロール値を低下させる作用
血液中の悪玉(LDL)コレステロールは、LDL受容体と呼ばれるたんぱく質によって肝臓内に取り込まれ、分解されます。

ポリコサノールを摂取すると、このLDL受容体の数が増えて血液中の悪玉(LDL)コレステロールの回収量が増加。結果として、悪玉(LDL)コレステロール値が低下します。この作用は多くの試験で実証済みです。実際、先に紹介した試験では悪玉(LDL)コレステロール値が20.2%低下しています。

◇悪玉(LDL)コレステロールと善玉(HDL)コレステロールの比率を改善する作用
ポリコサノールは、肝臓のLDL受容体の数を増やして血液中の悪玉(LDL)コレステロールの減少には役立ちますが、善玉(HDL)コレステロールの量には影響しません。そのため、ポリコサノールの摂取は、悪玉(LDL)コレステロールと善玉(HDL)コレステロールの比率を表す「LH比」の改善にも役立ちます。

LH比は、血管内の状態を反映する指標の一つです。先に紹介した試験では、総コレステロール値・悪玉(LDL)コレステロール値の低下に加え、LH比が28.7%改善されたことが報告されています。
sub2_悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎると良くない理由
ここからは、悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎると良くない理由を説明します。

◇悪玉(LDL)コレステロールとは?
悪玉(LDL)コレステロールは、ヒトの体内に存在する脂質の一つです。

LDLコレステロールの役割は、肝臓で生成されるコレステロールを体全体に運ぶことです。「悪玉」と呼ばれますが、体にとっては欠かせない成分で、血液中の濃度が正常範囲内であれば特に問題はありません。

もちろん、健康のために、LDLコレステロールが増えすぎないようにすることは大切です。しかし、少なすぎるのも好ましくありません。LDLコレステロール値が低くなりすぎると、心の状態が不安定になったり、生命に関わる病気にかかりやすくなったりすることが報告されています。また、女性においては、胎児に悪影響をおよぼす可能性も示唆されています。

一般的な生活で、LDLコレステロール値が低くなりすぎることはほとんどありませんが、極端な食事制限などは避けるべきでしょう。

◇増えすぎるとなぜ良くないのか?
血液中のLDLコレステロールの量が増えすぎると、動脈壁の内部にコレステロールが入り込んで蓄積します。蓄積したLDLコレステロールは酸化して血管壁を傷つけ、結果として血管の柔軟性を損なうことに。血管のしなやかさが失われると、血液を送り出す際の圧力(血圧)で血管が傷つきやすくなることも大きな問題です。

血管壁が傷つくと傷の修復のために血小板が凝集し、さらに酸化されたLDLを排除するために白血球が集まってきます。その結果、血管の内側が盛り上がって内径が細くなるだけではなく、盛り上がった部分が線維化して血管が硬化してしまうのです。

また、盛り上がった部分が崩れて、血栓が形成されるリスクも無視できません。血栓が血液で流されて心臓や脳の血管に詰まると、体に重大な悪影響をおよぼすことになるからです。

LDLコレステロールが増加しても、体に特別な変化がすぐに出ることはありません。しかし、増えすぎた状態を放置すると健康を損なうリスクが高くなります。したがって、健康診断などでLDLコレステロール値を指摘されたら、早めに何らかの対策を講じるべきでしょう。

悪玉(LDL)コレステロールについて詳しくは下記サイトも参考にしてみてください。

LDLコレステロールとは?働きや体への影響と値を下げる方法を紹介
ポリコサノールは、サトウキビなどのワックス成分から抽出される、炭素数20以上のアルコール組成物です。ポリコサノールには、肝臓におけるコレステロールの生成を抑制する作用があるため、フランスやイタリア、中南米など世界30か国以上で使用されている機能性関与成分です。

もっとも、ヒトに対する安全性・機能性が科学的に実証されているのは、2022年4月現在キューバ産サトウキビ由来のポリコサノール以外にありません。キューバ産ポリコサノールには、総コレステロール低下・悪玉コレステロール低下・善玉と悪玉の比率改善などの作用があることが報告されています。

悪玉コレステロールは、増えすぎると血管の内側に蓄積するなどして、脳や心臓にも悪影響をおよぼしかねません。コレステロールに対する3つの作用を有するキューバ産ポリコサノールは、健康サポートに役立つ有用な成分といえるでしょう。
齋藤先生_背景透過_切り抜き

監修:ナグモクリニック東京院 女性更年期外来担当医師
斎藤 糧三 医師

1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。
2013年よりナグモクリニック東京院で栄養外来と女性更年期外来を担当している。
関連記事