女性は閉経前からコレステロール値が急上昇

中高年女性のコレステロール値のカギそれは「エストロゲン」
米国心臓学会(AHA:American Heart Association)がコレステロールガイドラインを新たに発表しました。

ガイドラインの重要なポイントは若い年齢からコレステロールの管理を積極的に開始する必要があるということです。 65歳前の心臓病の発症、高コレステロール血症など家族歴がある場合は、なんと2歳からコレステロール数値を管理するべきであると提案しています。

そして、ガイドラインで目立ったのは中高年女性のコレステロール管理の重要性を強調している点でした。その理由には、女性の場合は閉経とともにコレステロールが急激に上昇して心血管疾患の危険性が急増するからでした。

米国ピッツバーグ大学のカレン・マシューズ(Karen Mattews)博士が中高年女性2,000人を対象に10年間の追跡調査した結果、閉経1年前頃からコレステロール値が高くなることが分かりました。特に傷ついた血管壁に浸透し、損傷を引き起こす悪玉コレステロールであるLDLの数値は閉経前後2年の間9%増加し、総コレステロールは6.5%増加しました。

閉経前後でコレステロール値が高くなる原因は、「エストロゲン」という女性ホルモンでした。血管系の女性ホルモンであるエストロゲンの役割は多岐にわたります。エストロゲンは血管内皮細胞から一酸化窒素の生成を増加させ、血管の弛緩を促進します。そして、悪玉コレステロールLDLの受容体を活性化させ、血中LDLコレステロールを除去し、肝臓でアポリタンパク質A-1の生成を増加させHDLコレステロール合成を増加させます。従って、閉経前後でエストロゲン数値が急減すると、血管が硬くなり悪玉コレステロール数値は上がり、善玉コレステロール数値は下がり、血管の健康に赤信号が点灯します。
中高年女性に推奨する3つの食習慣
更年期におけるコレステロール管理のために、3つの食習慣を守ることが重要です。

まず、1つ目は1日1回以上、豆から作られた食品を摂取することです。豆は植物性エストロゲンのイソフラボンが豊富です。体内で女性ホルモンのエストロゲンと同様に作用して更年期の症状を緩和させる効果があると言われています。

2つ目は牛乳を毎日2回以上飲むこと。エストロゲンが減少すれば、骨密度が減少し骨粗しょう症のリスクが大きくなります。骨の損失を防ぐためには1日2回以上の牛乳を摂取することが大事です。

最後に、血中の脂質を改善するためには、オメガ3脂肪酸が豊富なクルミ、アーモンド、青魚などを定期的に食べることです。

健康な体を維持するために、普段から食生活に気をつけて備えておきましょう。
齋藤先生_背景透過_切り抜き

監修:ナグモクリニック東京院 女性更年期外来担当医師
斎藤 糧三 医師

1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年、「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。
2013年よりナグモクリニック東京院で栄養外来と女性更年期外来を担当している。
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